after Christmas


今年のイブは生憎と2学期の最終日と重なってしまった。

終業式が終わった後も何やかやと職員室や生徒会室に引っ張り込まれてなかなかお役御免にならない。
俺はとっくに「生徒会長」という役職を返上したと思っていたんだが。
ようやく雑務から解放された時には辺りはすっかり暗くなっていた。
コンビニで腹の膨れそうなものを適当に見繕ってマンションに向かう。
華やかなライトアップや店頭から流れるクリスマスソングに、今日が恋人たちの一大イベントが全国的に繰り広げられている日であることを無理矢理気付かされる。
そうだ、今日はクリスマス・イブだった。

俺は無神論者だし、機嫌をとらなきゃならない彼女がいるわけじゃないから関係がないといやあそれまでだ。
ローストチキンやクリスマスケーキで食卓を囲む、なんておめでたい家族を持った記憶もない。
耶尋とは・・・大昔に何度かそんなママゴトみたいな真似をしたかもしれない。
そんなつまらない事を考えながら真っ暗な部屋の電燈を点けた。

「・・・・!?」

朝家を出た時にはコップ1つ置かれていなかった食卓に、見事なクリスマスディナーが用意されていた。
俺の好物のポテトサラダにサンドイッチと、そして色よく焼けたチキンのもも肉。
付け合せには色とりどりの温野菜が添えられている。
空っぽのスープ皿に入るのはコンロの上の鍋で温められるのを待っているポタージュだろうか。
一瞬部屋を間違ったのかとあり得ない考えが頭をよぎったが、すぐさまソファにだらしなく手足を伸ばしている花房に気が付いた。

サンタクロースの赤い衣装に身を包んで寝こけている。

そう言えば何日か前にあれこれ言いがかりをつけてきて、部屋の鍵を持ち出されたことを思いだした。
あまりに煩くて面倒になったので、「すぐに返せ」と渡したままになっていたが、そうか、こういうことだったのか。
俺を驚かそうと準備して、間抜けなことに待ちくたびれて眠ってしまったんだろう。
花房らしいというかなんというか・・・。
口を開けたまま気持ちよさそうに眠っている、まだまだあどけない寝顔を見ていると思わず笑みがこぼれてしまう。
無意識に・・・そう、全く無意識に花房の柔らかそうな頬に触れようと手をのばしかけた時、何の前触れもなく瞼が開いた。
はっと気付いて手を引く。
大きな瞳に見据えられてドギマギする。
それに気づいたのかどうかはわからなかったが一瞬間をおいた後、少々寝ぼけ顔のサンタは俺の目を見てにっこり微笑んだ。

「メリークリスマス、生徒会長!」

END